スコットランドの思い出 Trossachs 再訪



2枚の絵を見比べていただきたい。上は1889年の版のもの。下はhttp://d.hatena.ne.jp/old_tallinn/20060113に掲載した1894年の版(手元の版に扉がないので元の所有者の書き込みによる推定)のもの。このホテルは増築を繰り返したことが知られる。先にSSの初版は某書店の本書についての説明により1891年と書いたが、初版刊行年についてはさらに調査する必要があるようだ。それにしても、ホテルの変遷を追う(き)まじめな編集に敬服する。

スコットランドの思い出 Edinburgh, The Castel


エジンバラといえば城。市中心部の険しい岩塊上に築かれた城は当時も名所であったことは想像に難くない。



百十余年前の城下の交通は馬車。犬がはねるどこかのんびりとした風情。



城から新市街方向を眺める。中央左は Scott Monument と呼ばれる Sir Walter Scott を記念した塔。その右は鉄道駅 Waverley Station。

スコットランドの思い出 Edinburgh from the Calton Hill


Souvenir of Scotland の魅力のひとつはそこに描かれた風景の多彩さにある。SS の著者は、スコットランドを、単に、湖沼、丘陵、渓谷といった自然美の宝庫ととらえず、都市や港湾、廃墟となった城や修道院、またそれらと自然との調和に目を向けている。ここに掲げたのは、古都エジンバラの都市景観。市中心部東寄りに位置する Calton Hill から左方旧市街を含む市西部を俯瞰する。中央を西に延びる通りは今日ショッピング街として賑わうプリンセズ・ストリート(Princes Street)。綴りからわかるとおり Pricess (王女)通りではなく「王子通り」である。ジョージ3世の2人の王子 Duke of Rothesay(Prince George、後のジョージ4世)と Frederic にちなむと聞く。




10x14cm の小さな版面ながら、200dpi でスキャンすると丹念に描写された細部が出現する。

スコットランドの思い出 The Trossachs Hotel


今日 Loch Lomond とともに国立公園を成す森林渓谷トロサックス (the Trossachs) のホテル。とんがり屋根の円筒構造をもつ特徴あるたたずまいは、ここに滞在した旅行者に美しい風景とともに楽しい記憶を残したにちがいない。わら塚を作る農民たちが趣を添えるが、逗留客の姿は見えない。http://www.incallander.co.uk/postcards/photo12.htm にこのホテルを写真に撮った絵はがきのスキャンが掲載されている。母屋に変化は見られないが、右手の建物はこのスケッチとは異なる。人気の故に客室として増築されたのであろう。

スコットランドの思い出 Loch Lomond


Ernest George の London はしばらく休載して、Souvenir of Scotland (T. Nelson & Sons 1891年初版, London, Edinburgh and New-York) からスコットランドの風景をご紹介しよう。同書はこのようなスコットランド各地の風景を描いたはがき大の多色石版画を120枚収める。今日の様に写真が普及する前には旅行者は本書の類を求めて、旅の思い出としたのだろう。出版物としては成功したらしく、英米古書店には10年以上にわたる版が100年以上を経た現在も潤沢に出回っている。どこか銭湯の湯船の向こうによく見る絵の様な風情が懐かしい。